もうだめ

本日のmathoverflow案件

これについて.

Question:
In different books one can find different implicit definitions for a large cardinal axiom.
My question is that which one of these definitions are more popular or standard amongst set theorists?
Any reference for an explicit definition of a large cardinal axiom is welcome.
What is the definition of a large cardinal axiom?

Woodin II を見ろやらなんやらコメントが付いている. off-topicにされているがdiscussionの余地はあると思う,少なくとも門外漢からすれば. 自分自身でも全然纏まっていないのですが,書かねば,って感じなので書きます. 色々間違ってるかもしれないのでなんかコメントくれるとありがたいです.

私自身はあまり深く考えていなかったわけだが

巨大基数ってのは,そもそも誰が言い出したんだっけってことすら知らんアレだった. 少なくとも意識下にあるのはGödel先生が言い出したLarge Cardinal Programなんだよ. Gödel以前にもあったし,当然強到達不可能基数とか可測基数もあった.

Large Cardinalの存在を仮定しないとモデルの存在すらわからないような主張が存在することがわかったのもこの時代だ. Large Cardinalがないと困るって状況も多くなってきた.

そこでGödelのProgramというワケ. GödelのProgramとは大雑把には以下のものだ: 集合論的な命題は矛盾がないものであれば,Large Cardinalの存在の仮定のもとで無矛盾であることがしばしば示される. Large Cardinalとは例えば強到達不可能基数や可測基数,超コンパクト基数のようなものだ. 逆に,そのような命題から当のLarge Cardinalの存在の主張の無矛盾性も示されることもある. このような状況ははそのLarge Cardinalの存在の主張とequiconsistentであると言われる. さて,Large Cardinalは順序数であり,線形に並んでいる. しかも,多くのLarge Cardinalの性質は比較可能である. 例えば,超コンパクト基数は可測であるし,可測基数は強到達不可能である. このような状況を見るに,任意の命題に関してそれにequiconsistentなLarge Cardinal Axiomを見つければ,それはLarge Cardinal Axiomたちのなす線形な構造の中に位置づけられ,それをその命題の無矛盾性の強度(consistency strength)のように考えることができないだろうか. つまり,任意の命題の無矛盾性の強度をLarge Cardinal Axiomという物差しで測ることができるのではないか. このような考えのもとで命題の無矛盾性の強度を調査していこう.
盛大な誤解があるとの指摘を受けたので訂正.

Gödel's Program:
Decide mathematically interesting questions independent of ZFC in well-justied extensions of ZFC
ref. J. R. Steel, Godel's Program

というものだ.

Large Cardinalって…?

わからん. いや素朴にはより大きい,第2のの``ようなもの''. なんだけど. 少なくとも巨大基数公理という位だから,
という形の命題であろう. は順序数で巨大基数を表す.

無矛盾性の強度の側面から考えるとの無矛盾性を導くという性質は備えていて欲しい:

案その1

を定義にする

ではこれを以って巨大基数公理の定義となすべきか. いやあ,こんなんじゃダメでしょ. のモデルは別に欲して作ってるものじゃないし,そもそものモデルがあるってところからは何もそれ以上出てくるものはない. はどこ行った.

あ!そうだ,考えればいいじゃん. そういえば強到達不可能基数についてのモデルになるという性質があったからだ.

案その1改

を満たすを巨大基数と呼ぼう

全然ダメです. Levyの反映定理もしくはLöwenheim-Skolem-Tarskiの定理により,を満たすならば,未満の十分大きい可算共終なをとることで,を満たすように出来ます. こんなを巨大基数と呼ぶのはまずいだろう.

案その2

じゃあ強到達不可能基数でいいや.が強到達不可能基数であることを導けばを巨大基数公理って呼んでもいいよね.

うーん,いい線いっているかもしれないがコレはちょっとまずい. 例えば

とかは定義の条件を満たすが,これぶっちゃけじゃなくても何でもいいし,巨大基数公理からどんな命題も直接(equiconsistencyの意味でなく)導けてしまう. GödelのProgramの目論見もぶち壊しだ.

じゃあもうちょっと弄ろうってことでWoodinのContinuum II(pdf)による定義を紹介します.

案その3

-formulaで,が強到達不可能であることを導き,かつ任意の強制半順序に関してを満たせば,を巨大基数と呼ぼう.

これは結構いいんじゃないの. というのも,例えば先程のが強到達不可能でが成り立つとかいうはこの定義を満たさない. 実際,小さい強制法で連続体濃度は自由に弄ることができるのでのところは強制後に壊れるからだ. また,小さい強制法で壊れないって言うのは多くの巨大基数がもつ基本的な性質だ.

実際,Solovayは強到達不可能基数が小さい強制(となるような強制半順序による強制)で保存されることを示した. 因みに歴史的にこの定理は,Gödelがかつて抱いた,巨大基数公理が連続体濃度を決定するのではないかという予想を覆すものであった.

現代的には巨大基数は初等埋め込みの臨界点という形で表現されるものが多い. 初出は忘れたが,以下の定理が良く知られている:

任意の初等埋め込みに対し,その臨界点をとすれば, 任意の半順序とそのGeneric filter に関して写像
という初等埋め込みに拡張される.

ということで,このいい感じの埋め込みを考えれば多くの巨大基数は小さい強制法で壊れないってことが示せるワケだ.

ところで,っていう条件は何なんだろうか. コレはおそらくWoodinの-logic絡みのことが元になっている. -Conjecture仮定すると巨大基数公理は互いに比較可能になるらしい. ヨクワカンネ.

まあ多くの巨大基数はとかですよ. 強到達不可能基数はです. が強到達不可能か否かで重要なのは基数の正則性です. これは論理式で書けます.

可測基数はです. が可測ってのは上の測度があればいい. ところで上の測度はの冪集合の冪集合くらいの要素になっているのでくらいあればオッケー. ところで,という論理式はで書けることがよく知られているので,ここにraging overした測度が存在するという存在量化加えてです.

じゃあ超コンパクトはっていうと…あ…あれ…もしかしてこれってでは. 超コンパクト基数は任意のに対して,上の正規ファイン超フィルターの存在するときそのときに限り超コンパクトになります. 詳細は割愛します. が,このフィルターはの冪の冪くらいには入っているので,各に対して正規ほげほげ超フィルターの存在の主張はです. よって一番外のをとって

いや,でもなんかうまい書き換えすればで書けるんじゃないのって思うかもしれませんが,多分それは無理です. 次の定理があります:

定理: が超コンパクト基数ならばが成り立つ.
A. Kanamori, The Higher Infinite: Large Cardinals in Set Theory from Their Beginnings (Springer Monographs in Mathematics)

この定理を使えば超コンパクト基数が,もし存在すればそれが-definableでないことが以下のようにしてわかります.

実際,もしが超コンパクトであることと上同値であるような-論理式が存在したとしましょう. 以下で議論します. を超コンパクト基数で最小のものとします. すると,前に定理により,が成り立ちます. 今,のことを超コンパクトと思っていて,-論理式なのだから,初等性によって, でも論理式は成立します. よってあるを満たすようなものが取れます.
再び,を用いれば,このの中だけでなく,でも超コンパクト基数になっていることがわかります. 然し,これはが最小の超コンパクト基数であることに反します. QED

なるほどなるほど,この定義ってのはすべての巨大基数を捉える定義にはなってはいないらしい. ではって制限を取り払ってはどうか. 巨大基数公理界隈にはそもそもそれ一階述語で定義出来るのかよってものも多いしって制限とり払ったとこで実際どうなのって話もある.

結論

えろい人に聞いて下さい